運命

2010FIFAワールドカップ、日本のベスト8をかけた試合は惜しくもPK戦でパラグアイに敗れ4年後へと希望を託すことになった･･･。
PKで負けたのはある意味では運である。 駒野はPKで一本外したって構わないぐらいその前の試合から必死の防御をしてきて、そのおかげでベスト16まで日本が来れたのだ。 攻めることはない。 日本は少し運がなかったと言うことだ。
運といえば分公も文化祭のパフォーマンス組み分けで、参加希望パフォーマンス組を聞かれたのだが、見事男子が全く希望していない組に死亡してしまい、運がいいのか悪いのか、クラスを変な雰囲気にしてしまった。


よく 「運なんていつかやってくるものさ」 とか 「今年は万馬券も当てちゃったし、もうツいてる事なんて起きないよ」 と表現するが、分公が考える運はもうちょっとシステムで動いている。

上の例のように、 「運はいつか回ってくるもので、さらに1回運が回ってくると暫く来なかったりする」 という考えは
運の定量説
であると思われる。


しかし分公が考えるのは
運の拾い食い説
であって、これはバナナマンの設楽統が提唱する運の解釈法である。 運とは何時でも何処でも転がっているもので、その運をどのタイミングで、如何にして拾っていくか、というものだという考え方なのだ。 だから運の定量説から来る「いつかやってくる」「この前まで運が良かったから(悪かったから)～だ」 という発言は間違っていると思うのだ。
運を拾えるやつはジャンジャン拾うし、今すごく運の良いことがおきたって明日も運がいいかも知れないし明後日もそうかも知れない、挙句は一生ラッキーに過ごせるかも知れない。





まさに分公はこの数週間、それを実感している。


分公とそのゆかいな仲間たちは毎日昼食時にトランプゲームをしている。 ブラックジャックと言うゲームだ。 (一応説明。手札のカードの数字の合計を21に近づけるゲームである。最初は2枚手札をもらう、そこからカードを配ってもらうかもらわないかを選択し、一枚以外すべて公開されている相手の手札と自分の手札を手がかりに駆け引きをするゲーム。カードの合計は21に近いほどいいが、21を超えるとドボン、つまり負になってしまう。)

分公たちは昼食開始のベルが鳴るのと同時に昼食を手に、S君の席に集結する。 S君がトランプの所持者で、集結する分公たちよりいつも一足先にカードを切っていて、 「今日もやりますか・・・」 なんて怪しく笑うのだ。眼鏡をかけたヒョロリ男子である。実にブキミだ。

分公たちは昼食とお喋りのお供としてブラックジャックをしているのだが、毎回のゲームのビリが手札を回収、配布するディーラーの役を負うことになっている。 その他の勝ったメンバーはどうでもいいことを喋りながら弁当を食べる。



まぁ、その、運の話だから初めに言うが、S君がとんでもなく弱いのだ。




負け続ければずっとディーラーをやらなくてはならなくて弁当に手がつけられない。 本来なら心理戦を繰り広げ、手に汗握る真剣勝負のブラックジャックだが、何も賭けないし、負けても 「くそー、配るのメンドクさいなー」 程度のモノである。実力も糞もない。 ただカードを配って貰って「いる」「いらない」を伝えるだけの作業なのに、S君は負け続けるのだ。
分公たちが弁当の中身をカラにする頃にS君の弁当箱を覗くと、8割ぐらい残っているのだ。
昼休みはあと10分、ブラックジャックは容赦なく続く・・・



とうとうS君は弁当の半分も食べ終わらないまま午後の授業に参加するハメになってしまうのだ。 カードを配るのもS君、負けるのもS君、そこには一切のイカサマも何もない、純粋な運のなさがあるのだ。

それがここ数週間続いている。

S君はもう昼食時に弁当を食べるのを諦め、午前お授業の合間から弁当をがっついている。 もう訳が分からない。


多分彼は、昼食時のブラックジャックでまったく運が拾えないヤツなのだ。




そういう分公はここ2週間ぐらい続く梅雨、雨の日の通学にバスを利用しているのだが、絶対にちっちゃくて臭いオバサンと一緒に乗り合わせてしまう。 奇しくも降りる停留所が一緒なので、毎回下車の時に臭い思いをしながらバスを降りるのだ。
これは運が悪いと言うより運命というか、このオバチャンが良い香りがする女子高生じゃないという点で分公の一生の運を表しているというか、 とにかくそんな風に思えてきてならないのだった。

明日の 天気予報は、雷である。