お引越し予定。
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日光がまぶしく風の強い昼下がり。
校舎の5階に埋め込まれたある一室。
少年の手には一本のナイフが握られていた。
少年はそれを軽く振り上げ、左手に下ろした。
ドスッ
少年の左手に握られていた木片はナイフに抉られていた。
少年はそれを繰り返した。
ドスッ
ドスッ
だんだんとその木片は元の長方形の形をなくし、やがて新しい形へと変わっていった。
深く溝を刻まれては表面を抉られる。
少年は淡々としていた。
心などなくしたように。
ただ、ナイフを使って木片の形を変えていった。
ドスッ
カーブ。角。直線。曲線。
だんだんと生まれていくものと反対に、木片の周りには削られた木屑が散らばった。
もしその木片が何かに遣われるようなことになったのであれば、その木屑たちは一体何なのだろうか。
死骸。
ごみ。
木屑。
廃棄物。
どれともいえるしどれとでもない気がする。
少年の右手がまた振りあがる。
ナイフの切っ先は風を切った。
先端は鳥のくちばしのように鋭くとがっている。
空間を裂き、まっすぐに木片に向かう。
ドスッ
木片に新たな傷を作った。
少年は更に力を入れる。
ぐぐぐ・・・
メキメキと軽く音を立てながら木片の表面が裂けていく。
次の瞬間。
木片を大きく飛び出した刃は自由を得た。
少年の意識とは違った、新しい方向である。
昼の日差しが刃に反射する。
刃は赤く染まっていた。
木片を気づけてきた銀の物体は、少年の指に刺さった。
刃は新鮮さに心がいっぱいになった。
これまで木を刻み続けてきたのが今、こうして暖かくて赤くて鉄くさいものを貫いたのだ。
刃は満足そうに鈍く、赤く反射していた。
・
・
・
キーボード打つときでさえ痛いね。
いやぁ痛い。
思いっきり刺さってたら泣き叫べばいいけれど、なんか中途半端にかすっちゃって血がさらさら流れる程度。
でも服とかに引っかかって
「イデッ」
となるのだ。
くそぅ・・・なんであんなにポカポカするのだろうか。
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