死に方も色々

不謹慎ネタが含まれます。
嫌な人は見ないで貰いたい。









「えらいもん見た・・・」
帰宅した父がボソッと言って帰ってきた。

今日の朝、父が出勤したときの話である。


父が自分の美容院のある弱居ビルに入ろうとしたとき、いきなり誰かに肩をつかまれた。

振り向けば、青い顔をした工事現場のつなぎを着た男がいた。


「ちょっときてくれんか・・・」

どうかしましたか？

「人が・・・死んでるんや」






あまり詳しくはいえないが、分公の父の経営する美容室のいくつか上の階に入っている店のオーナーが首を吊って死んでいたのだ。
いかにも関西のおばちゃん(朝鮮人だったらしいが)といったオーナーで父もしばしば言葉を交わす中だったらしい。
原因も不明。
大通りでは祇園祭の賑わいだってあるというのに・・・。

まさにミステリー小説のようだったと言う。



父はその工事現場の男と一緒に首吊り現場に行き、腰を抜かした。
そこには天井からつるされた女がいたのだからしょうがない。
運よく死体は向こうを向いていたが、もし顔が見えたら、間違いなく父のトラウマの1つになっていたに違いない。


いそいで祇園祭の交通規制を行っている若い警官に知らせに行った。

「ほんまですか！！すぐに応援を呼びます！」

小柄で若い警官は目を輝かせて公園を要請しに走っていった。
死体をまじまじと見ても怖くないと話していたそうだ。
若い警官にとってオーナーの死は、炎天下の中ただ棒を振ってつったっているだけの仕事からあこがれというか、これぞ警官の仕事！といった事件に巻き込まれられたきっかけだったかもしれない。

父は、「こんな目にあうんやったら宝くじ当てたかったわ」と嘆いていた。

オーナーにとっては唯一絶対の開放だったのだろう。



死ぬ。






この事件の乾式を仕切っていたこの道何十年のおやじは父に自慢げに語った。

「首吊りが一番楽に死ねるんや。こう、首にグッとうまいこと縄がかかれば、ふっと死ねる。体重の3分の1ほどの体重がかかるだけで死ねるんやで？硫化水素なんてアホみたいや。」

なるほどやっぱり首吊りが一番らしい。




オーナーは何を思って死んだかは知らないが、人間には最後の切り札がある。
死である。

もちろんこの世に取り残された人にどんな迷惑がかかるかは知らないが、どんなに追い詰められても、どんなに救えない状況に陥っても、逃げ道があるのだと思った。


いざとなれば死ねる。




色々な捉え方があるかもしれない。

そんなに簡単西を選ぶべきじゃないとか、死ぬなんてとんでもないとか。


でも「死」という切り札があるのだから絶体絶命もう死ねる、ところまではなんでもできる。
どこまでだって頑張れる。
夏休みの課題の多さに絶望した今日だったが、終わらなければ終わらないでいい。
まだまだ死ぬには早い失敗だと思えてくるのだった。（結局言い訳）