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思わせぶりほど厄介なことはない。

分公は先日高校のクラスの卒業旅行へ行ってきたのだが、そこでも思わせぶりってやつに痛い目を見させられた。
分公が男女数名のグループで喋っていたときのこと。
クラスの中でかなり可愛い部類の女の子、安田美沙子に雰囲気がにている子が
「あ~お風呂も入ってお腹もいっぱいになって、お酒でも飲みたいな~」
とか言いやがるの。
ちょっとおっさんくさいな、とも思ったが分公、ここは勝負どころだと踏み込んでしまう。
「ええな~、せっかく遅くまで起きてるんやし、ちょっとぐらいアルコールでもいれたいな!って感じやんな!」
みたいな。多分相当気持ち悪い顔をしていたと思う。
「やんな~!」
しかしそこで安田美沙子(風)も乗っかってくるのよ。

周りの男どももその会話を聞いておいしいシチュだと思っただろうが、分公はそんなノロマ野郎たちとはひと味違う。
分公たちのクラスが宿泊している施設の別館は貸切状態になっていて、そこに自販機も数台置いてある。
しかしソフトドリンク(水とお茶とアクエリアスしか売ってない)以外どれも動いてはいない。
本館にある自販機、分公たちが食事の際などに通った廊下にある自販機の群れにも酒のたぐいはない。
つまりクラスの男どもはこの施設のどこかに酒の自販機があることを知らないのだ!ハハッ!

分公は違うぞ!
この幼稚園時代から育んできた「施設探検心」を爆発させ、風呂上りのどさくさにまぎれて施設内を探検しまくっていたのだ!
本館の4階、誰も行くはずのない宿泊棟の渡り廊下の突き当たりに酒の自販機が!あるのだ!!
ハハッ!どんなもんだ!



分公はそれまた気持ち悪い笑顔で「ちょっとジュース買ってくるわ~」なんて言いながらその自販機を目指した。
夜の11時。
そろそろ夜も深まり、絶好のタイミングである。


急いで別館一階に駆け降り、クラスメイトの「どこ行くねん!?」の呼びかけにも「ちょっとちょっとなー」と軽く流して靴を履き、外へ飛び出した。
「ちょっとちょっとなー」の返事はどうかと自分でも思う。

閉まるドアの向こうでクラスメイトが何か言った気がしたが分公には関係ない。
ビールなりチュウハイなりが2本は買えるだろう500円玉を握り締め、本館へと一直…


一直線…ッ!?




分公の前に広がっていた光景は、どこまでも続く闇だった。

しまった。まずいことになったぞ分公。





このままでは…本館に…辿りつけない。
実は分公たちの泊まる別館は、本館とかなり離れていて、外灯もない暗い暗い闇の中を5分ほど歩かなくてはならないようになっている。
これは後に聞いた話だが、他のクラスメイトも外の暗さを利用して肝試しをしようと数名で外へ繰り出したのだが、あまりに周りが見えなさ過ぎて懐中電灯を持ったメンバーがパニックを起こし一人で走って逃げてしまったらしい。残されたメンバーは足元が全く見えない山道(ってほどでもないが)を携帯の灯りを頼りに帰ってきた、という事件があったらしい。もうちょっと足を遠くまで伸ばしていたら軽く友情崩壊してもおかしくない事件だが、別館の灯りがまだ見えていたらしいので笑い話で済んだそうな。よかったよかった。


じゃなくて!


分公は全く良くなくて、勇気付けあう同伴者もいなければ、足元を照らす携帯すら持ってきていない。
そのころ懐中電灯が一階洗面室の壁に掛かっている事実なんて誰一人して知らないし、分公は完全に希望なし、視界なし、500円玉だけで進まなければならなかったのだ。



暗闇のなかで必至に考えた。

女の子と飲む酒をとり、下手したら道を外れて山の中へと転げ落ちてしまうかも知れないという危険を冒してまでこの光なき夜をゆくのか。
色々考えた。
シングルFPSゲームにおいて最強の作戦と言われる「MAPの端作戦」。
これを使用して道の端を辿り続ければいいのではないか。
しかし、ガードレール的な柵さえない砂利道はこの暗闇の中ではその端を闇と同化させている。
どこから斜面になっているのかすらわからない。
自分の別館へ来たときの記憶だけで進むには経験が少なすぎる。
電気をつけない自分の家の中でも足をどこかにぶつけないか不安になるのに、始めて来た土地ではさらに難易度が上がっているだろう。


どうするよ!?俺!?



寒い夜だった。
どーんと空に漬物蓋をしたような雲は分公に月明かりもくれてはくれない。
外気は興奮した分公の体温をぐんぐん奪う。

早く決断しなくてはならない。
命をかけるとはまさにこの事であった。

その時!暗闇のなかで悶える分公に一筋の光が!




暗闇の中で必至に動向を考えていた分公の目が慣れてきたのだ。
別館の光のおかげで砂利道が若干見えてきたのだった。


「これは…!行ける…!」


一歩ずつ歩き始めた。
ものすごく慎重にだ。
忍者の如く静かに、息を殺して、集中して、うっすらと見える道。
いや、実は道など見えていなかったのかも知れない。
分公の脳がそう見せていただけなのかも知れないとさえ思えるような微かな道の輪郭を見極め、進んでいく。
階段を降り、本館へつながる渡り廊下まで来たとき、分公の足は早足になっていた。



超怖い超怖い超怖い超怖い超怖い超怖い超怖い超怖いいいいいいい!



本館はうっすらと照明がついていて安心はしたが、急いで4階まで駆け上がった。
せっかく暗闇になれた目がまた光に晒されるのが怖かったのだ。
また帰り道で遭難しそうになろうもんなら今度こそ死ぬ。
もう二度と生きて帰れない気がしたのだ。


その割には酒を買いに行くだけというなんとも間抜けな分公。
書いていて自分が恥ずかしい。


自販機に握りしめすぎて暖かくなっている500円玉を滑りこませ、酒を選ぶ。
「ビールが一缶300円かよ!?ボッタクリやないか!!」
とブーブーつぶやく。一人で。
お釣りを取って二本のチュウハイを手に。
気温のせいで缶を持つと手が凍りそうなぐらい冷たくなる。がまんだがまん。


そしてまた急ぎ足で闇の中へ。
暗いがまだ一直線だし壁もあって歩きやすい渡り廊下を行くうちに目もなれた。
焦らなければ死なない!!
待ってろよ安田美沙子(風)!!分公の命の酒をふるまってやるぜ!!!










安田(風)「やっぱり今日はお酒はええわ~」


ちょっとまってマジで言ってる意味がわかんないんですけど(`;ω;´)



まぁ、なんていうか落ちの分かりやすい話だったろうが、綺麗に断られた。
分公は悲しみに明け暮れ、結局身長180cm超の酒の味がわかる大男と酒を飲んだ。
チュウハイ一杯で全然酔えなかったがテンションを無理やり上げて、誰かが夜の12時まで隠し持っていたUNOをみんなで盛大にやった。
安田(風)にドローフォーを浴びせられもした。
こうなったらドローフォーでも気持ちよくなってくるもんである。
もうどうにでもなーれだ。
命を掛けて買ってきたチュウハイ(150円)は15分で分公の胃袋と、隣で顔を赤くして上機嫌になっている男の胃袋に消えた。


こうして夜は更け、朝日が顔を出した。
分公が歩んだ道は陽の光のもとではなんともない道だった。
あまりのあっけなさに結局この必死の買物劇は恥ずかしくなって、チュウハイを分け与えた友達にしか教えられなかった。

安田(風)も、一緒にUNOをしたメンバーも、朝までジェンガをして分公がボロクソに負かした連中も、誰も知らない。多分なんだかんだ分公の一生の中で一番ウマイ酒になるんだろうな、と思いながら空き缶を踏みつぶしたのだった。

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無題
リア充爆発しろ
ぐりおに URL 2011/03/25(Fri)01:50:00 編集
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